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『新興宗教オモイデ教』を読みました

オーケンこと大槻ケンヂの『新興宗教オモイデ教』を読んだので感想を書く。

この小説はミュージシャンである大槻ケンヂが1993年に上梓した代物だ。オーケンと言えば筋肉少女帯のフロントマンとして名を馳せた一流ミュージシャンであり、現在テレビ出演は少なくなってきたものの、ひと昔前はテレビでも露出していたイメージがある。ミュージシャンとしても有名だが、作家としてもそれなりの、いや、素晴らしい評価を受けており、いとうせいこうや、ピース又吉と引けを取らないマルチタレントを発揮し、芸能人かつ小説家としてはかなりのプロップスを誇る。

とは言いつつ俺がこのオーケンの本を読んだのはこれが初めてである。代表作の『グミ・チョコレート・パイン』は積ん読であり、10年選手であるため大分下の方にある。ジェンガのごとく上手いこと引き抜かないと雪崩が起きて足がもげてしまう、それくらい長いこと未読まま放置してあったのだが。

『新興宗教オモイデ教』はいわゆるジャケ買いだ。古式ゆかしい美しい女性像、恐らく作中に登場するヒロインなのだろうが。


23年経っているが、全然今読んでも楽しめた。ラノベ感覚で読んでも楽しいかもしれない。何しろ新興宗教を扱った作品だ。キャラクターの個性とインパクトがハンパではない。ストーリーもラノベ以上純文学未満であり、ページをめくる指が止まらんぞ!

日々の生活と俗世間、周りの人間に対して不満に対して不満を抱き続けている主人公が、他のクラスメイトとは違う雰囲気を醸し出す女子に恋をする。彼女はパッとしない学校の先生と不倫をしていたという噂があり、その先生とは破局し、それを機に新興宗教に入信し、精を出し、身を入れ込んでいくのだが。

小説だし、物語だし、新興宗教を題材にしてるし、作中にも超能力めいたものが普通に起こるし、対立する教祖とバトルするし、一見荒唐無稽な展開が繰り広げられているように思えるが、実際、現実にもよく似たようなことが起こっていると思う。

先生と不倫して、うまくいかなくて学校来れなくなって宗教に入るなんてザラにある。思春期の多感な時期だからこそ、もろに影響を受けるだろうし、すがったら楽になるし。どんな怪しいもんでも、事実思い込みによって救われるのだから、周りがいくら騒ごうが信じきっている人には声は届かないだろう。本作では主人公が新興宗教に関わっていくこと並びにヒロインが入信したことについて、そのこと自体を悪く言う人間はほとんど出てこない。現世に何の不満もない人にとって、もしくはすがりたいものがない人にとって、新興宗教の話って超面白いのだ。

この小説で焦点が当てられているオモイデ教では「メグマ」という超能力を使って人間を植物人間にしたり、殺したりできる。対立する教団の教祖と直接対決しこのメグマによって廃人に追い込んだりした時は「バトルものなのか、これは?」とも思い、読みすすめていくと、主人公が片腕として使われている人物に深い業を与えた人物(異なる教団に所属)とのバトルになった。これは事実上のラスボス戦であり、主人公が類稀なる宗教的才能を発揮したバトルでもあった。ラストでは教祖との直接対面のバトルになるが、これはもう勝負というより退廃的な教祖の態度とそれまでのカリスマ性を有した教祖像とのイメージの乖離が素晴らしく、主人公と読者は「もうこれはバトルどころではないな、こんなやつが教祖であり、ヒロインを首ったけにしたやつだったなんて」という思いでいっぱいである。ヒロインは教祖に惚れ込んでおり、教団の勢いが落ち込んでみすぼらしい見てくれになっても尚偏愛を捧げているのである。

ラストの対面、対話のシーンは本当に心が揺さぶられた。「あの女をちょっとした色情性にしてやったんだよ。(中略)お願いですもっとしてくださいトー様と泣きながら哀願するんだ。口汚くののしってやると、ヒーヒー言いながら歓喜の喘ぎ声を上げ、そして頂点へ向かっていつまでも腰を振るんだ、そういうケダモノにしてやったんだよ。」
と教祖であるトーが言うのだが、ここが一番この本を読んでいて耐えられなかった。
実は俺も昔友達が新興宗教にはまっていて、勧誘された経験がある。奴は心酔しきっており、言い方は悪いがはっきり言って「洗脳」されていた。俺は奴が言っていることは特に間違っているとは思わなかったし、絶対に正しいとも思わなかった。ただ、「こいつは何を言ってるんだ?」と思うことが多々あり、それは無宗教の俺にとって、理論や理屈がわからないというより、もっと感覚的な部分で腹に落ちなかったんだと思う。トー様がこの小説でヒロインに対して思っていることを、奴が信じている教団の誰かが、少しでも思っていたらと考えると本当に怖い。そして、なんつーか少なからずそういう思惑が蠢いてる状況って実際問題ありそうで怖い。

新興宗教に入信する人は、「家族に不幸があった」又は「家族or自分が重い病気になった」というケースがほとんどだと思う。その子供は2世として半ば強制的に入信させられることになる。この小説ではヒロインが教師と不倫をしてしまったことから宗教に関わりを持つことになるが、主人公は社会や人間関係に対する漠然とした不安と憤りを機に、ヒロインに惹かれて宗教と関わりを持つようになったが、この主人公のようなケースはあまりいないだろう。2世以外ではもっと重大な大きな出来事がなければ新興宗教なんてものには見向きもしないはずだからだ。
何かに救われたい一心で入信した教団のトップがトーのようなことを言ったら一気に地獄に叩き落とされるだろう。まあでも熱心な信仰をしている人はまた違う教団に入信にして勝手に救われるだろうが。あと、俺は別に全ての新興宗教が悪い団体だとは思っていないことはここに記しておく。

文庫版の最後に永井豪による漫画があるのだが、この小説は漫画、もしくは映画にしたら非常に面白そうだ。あとがきではオーケンのインディーロックシーンについて思いを馳せている。スターリンの遠藤ミチロウ、財団法人じゃがたら、あぶらだこ、町田町蔵について等。新教宗教が醸し出す危なっかしさみたいなモノとアングラなインディーロックは確かに何か親和性がある気がならない。

人間椅子とか好きならこれを読んで文学とアンダーグラウンドカルチャーの旅へ旅立とう!






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